第2章『厚さ8ミリの刺客』
我が家の食糧事情や家庭事情を考慮せずに
氷を入れ、密かに陣地を拡大し始めた「敵」
このころは、まだ肉が壮大な陣地を持っていた…
氷が冷凍庫を支配するようになってから幾日かは現在のような
暴君っぷりを発揮していなかったリアルジャイアンこと「敵」
当時の冷凍庫は、牛が優雅に玉座に座り君臨、その周りを
家臣の豚と鶏が囲んでいて、間違いなく王宮の様だった。
その他の部類にはいる、薬味(ニンニクやら生姜やら)や
お茶葉は時々謁見を求める町人や商人のように、出入りが激しかった。
そう、当時は「その日の魚その日の内に♪」
だったのだ。
(これが、「今日の魚ノルマ」という言葉を産んだ原因でもある)
敵も、今ほど誰彼かまわず追いかけ回すような釣りをしているわけではなく、
比較的、スーパーでもお会いできる魚を釣ってきていた。
(それしか釣れなかったのか?!異議あるならコメントせよ!敵!)
あれはいつのことだったろうか、上州○だかキャスティ○グだかの
釣具屋で、「干物作成用の網」を意気揚々と購入してきた。
そう…「釣った鰺で干物つくっちゃおーーーーーーっと♥♥」
という魂胆。
そんなの網みりゃ解るよな。
海ナシ県民にしてみりゃ、初めて見るオモロ物である。
そのころから買い始めた「魚料理本」を見ながら、食塩水を作る。
鰺を浸す→干す→出来る→食う→余る。
鰺の干物だって、1枚喰えれば私としては充分であり、
余るほど作る必要性は皆無である。
が、鰺は5枚も6枚と網に入れられ、干されたのである。
何しろ海ナシ県民だったので、「干物を冷凍する技術」は知らなかった。
敵は、1枚1枚、慈しむように干物をラッピングし、そのまま
牛の支配する聖なる王宮にぶち込んだのである。
おそらく、刺客が忍び込んできたとき、王宮のモノどもはハデに驚いただろう。
見たことのない薄っぺらくて磯臭い銀色の物体が王宮に侵入し、
コトもあろうに玉座にいた牛にペッタンペッタン覆い被さったのだから。
彼らと同じように私も驚いた。
牛が「生臭い生臭い」と苦しみ、家臣達も打つ手ナシ!と諦めた頃に
敵が放った刺客はコチコチに凍った。
そして…コトもあろうに、牛を玉座の片隅に寄せ、
空いた部分に「刺客 干物」を座らせたのだ。
玉座は仲良く半分コってな感じで…
干物という刺客を放った敵は、主婦の聖域でもある「冷凍庫」を勝手に
「オレ仕様」 にカスタマイズし始めたのだ。
厚さ8ミリの刺客は玉座の半分を奪った。玉座を奪うどころか、
王宮の使用権全てを奪うべく、最初の刺客は放たれたのだ…
そして刺客は、ミリ単位の厚さからセンチ単位の厚さへ、
立たせて入れることの出来る干物から、
立たせて入れられない切り身へと変貌していくことになる…
肉が政権を握っていたこともあったのか~。
『干物』というクーデターが無ければ、政権安泰だったのにね。
なんか、途中で挑戦的な発言が…
平和な冷凍庫でした。
牛は民のシアワセを願う方でしたから…
今は、戦国時代です